東大の通称名使用条件の厳しさ
こんにちは、シンです。
いつもこの挨拶から始まってますが、なんか個性的な挨拶欲しいですね。
今回は絶賛TOPIAで取り組んでいる、通称名使用の条件緩和に関する話です。
現在、東大で性別違和を理由に通称名を使用するには以下の書類を出す必要があります。
・通称名使用申請書
・医師による性別違和の診断書2通(2通目はセカンドオピニオンとして)
・保護者の同意書
この条件ちょっと厳しいよね、問題があるよね、ってことで今大学側に働きかけをしているところです。
以下、この条件の問題点について書いていきます。
厳しい点
・保護者の同意書
何がひどいってこれ、成人していても要求してくる。
特例法(戸籍上の性別を変えられる法律)でも20歳以上であれば当然保護者など関係なく性別を変えることができます。(特例法は特例法でハードルが高いけど)
特例法に関しては過去記事にも書きました。
reference-mylife.hatenablog.com
そもそも、保護者って基本的に未成年にだけ存在するもので、成人したら法律上保護者って存在しないし。
そして保護者という最もカミングアウトしにくいといっても過言ではない存在に、カミングアウトを強制してしまうのはたちが悪いし、保護者に理解がなければ大惨事である。
僕もこの条件が家庭内大戦争の引き金になった。
まあ、勝ったけど。
保護者の同意書が必要なせいで通称名使用ができない学生というのは僕の知る限りでも存在して、ただ保護者の理解がないというだけで自分の望む名前を名乗れないというのはなんとも不公平だと思う。
保護者の同意書を大学側が要求する理由は、保護者からのクレーム、もめ事を避けることだろう。
しかし、この保護者の同意書、保護者の全員ではなく、保護者のうちの一人のサインがあれば良いのだ。
よって、保護者が両親の場合、片方の親がサインを書いてくれれば、もう片方の親に全く理解がなくても通称名を使える。
家庭内戦争の更なる拡大が見込めそうな事案である。
そして、あまりクレーム対策にもなっていない。
そもそも、通称名を使用するときに、大学側は学生に「戸籍名と学籍名が違うことについて大学側は一切説明責任を負わない。自己責任。」という条件をつきつけているのだ。
じゃあ保護者に対しても自己責任にしろよ、と言いたい。
ちなみに、ICUや早稲田は保護者の同意書が必要ない。東大もそうしようぜ!
・精神科の医師の診断書2通(セカンドオピニオンとして)
1通は必要だと僕も思う。誰でも簡単に通称名を使用されたら困るというのは理解できる。
また、僕はずっと国が定めた性別違和診断のガイドラインでも診断書が2通必要だと思っていた。だから通称名使用のためにも2通必要なのだと。
どうやら、国のガイドラインでセカンドオピニオンが必要なのは、ホルモンを投与する場合や、性別適合手術を受ける場合だけらしい。
戸籍の名前を変えるだけなら診断書1通で変えられるのだ(戸籍の名前変更は当事者それぞれの状況を鑑みて裁判所に判断されるので、診断書1通だけで大丈夫かはケースバイケースではある)。
ちなみにICUや早稲田は1通で変えられる。
・そもそも性別違和を理由に通称名使用ができることが知られていない
上2つとは違った方向性の問題点である。ここでも高度な情報戦を制さないといけない。
だからこそ僕は「できることガイド」を作ったり、ブログを書いたりしているのだが、その情報もとどかない人がたくさんいるだろう。大学側から公式に情報を流してほしいところだ。
ちなみに早稲田は入学手続きの書類に明記されているそうだ。
以上、3点をどうにか解決できないか、TOPIAでは大学側にはたらきかけをしている。
なんだかんだと通称名使用制度の問題をあげつらったりしているが、フォローしておくと東大もなかなか良い大学である。
理解があって、僕のことを気に掛けてくれる教職員の方もいる。
僕はこの制度のおかげで人生で最も素晴らしい学生生活を送れている。
しかし、そこにたどりつくまでとても大変だった。我ながら頑張ったし、苦労した。
僕はこの苦労の分だけ損したと思っている。だってシスジェンダーの学生は全くしなくていい苦労だ。
「苦労した分だけ人は強くなる」とか言う人もいるが、僕はそうは思わない。
それはその苦労が、その人にとって耐えられる程度かつ何か新たな発見をもたらす、限られた場合だけである。苦労すればいいってもんじゃないし、何でもポジティブにとらえればいいというものでもない。
性別移行でゴタゴタするとかしなくていい苦労である。
僕が苦労して開拓した道はなるべく整備しておくので、後輩には是非とも平らな道を歩いてほしい。
僕が息切れしながら歩いた道も、先人がいたおかげで歩けたはずだ。